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ニキビ治療での皮膚科で処方される抗生物質の効果と副作用

更新日:2017.11.24
公開日:2014.11.28
ドクター画像
この記事の監修者
銀座スキンクリニック 院長 坪内利江子

ニキビ治療の第一選択の1つとなっている抗生物質は、ニキビにどのような効果をもたらすのでしょうか。ドクター監修のもと、抗生物質の種類と作用、ニキビ治療に使用される抗生物質の効果や副作用、注意点などについて解説します。

思春期の若者から大人まで、多くの人を悩ませているニキビ。皮膚科で行われるニキビの治療では、抗生物質が処方されるケースがあります。抗生物質にはどのような種類があり、どのようなニキビに効果があるのでしょうか。治療現場でよく用いられる飲み薬や塗り薬を中心に、その作用と注意点や副作用について解説します。

抗生物質とは

抗生物質は細菌などを死滅させる作用を持つ薬で、「抗菌薬」「抗生剤」とも呼ばれます。経口薬(飲み薬)や塗り薬、注射薬(点滴)、座薬、点眼薬などさまざまな種類があります。主に以下のような感染症や病気の治療に用いられています。

  • 呼吸器、消化管、尿路、皮膚、心臓内膜などの細菌感染症
  • 食道カンジダ症、肺真菌症など一部の真菌感染症
  • がん治療
  • 免疫抑制剤として膠原病や自己免疫疾患の治療

ニキビ治療における抗生物質の効果

抗生物質は、ニキビの治療にも用いられます。人の皮膚には、もともと常在菌と呼ばれる細菌が存在していますが、ニキビの原因となるアクネ菌も常在菌の一種です。

新陳代謝の低下やホルモンの影響などで毛穴周辺の皮膚の細胞分裂過程がおかしくなると、毛穴の入り口に角質がたまり、皮脂が排出されずにつまってしまいます。ニキビは、こうした状態から引き起こされます。アクネ菌は毛穴につまった皮脂などを栄養源に繁殖していき、炎症を起こしてニキビを悪化させます。

抗生物質は、アクネ菌をはじめとした肌に存在する細菌を死滅させることで、炎症を起こしたニキビの進行を抑制します。

抗生物質が効くニキビの症状

ニキビ治療に効果があるとはいえ、抗生物質はどのようなニキビにも適応するわけではありません。主なニキビの種類を、抗生物質が効くものとそうでないものとに一般用語で分けると、以下のようになります。

抗生物質が効くニキビの症状

微小面ぽう
肉眼では確認できない超初期段階のニキビ
白ニキビ
毛穴の表面に角栓(皮脂と古い角質が混ざったもの)がつまり、アクネ菌が増え始めた頃の初期ニキビ
黒ニキビ
角栓が空気に触れることで酸化して黒くなった初期ニキビ

ニキビの炎症を抑える抗生物質の種類

赤ニキビ
毛穴の内部でアクネ菌などの細菌が増殖をくり返し、炎症を起こして毛穴や周囲が赤く腫れたニキビ
黄ニキビ
赤ニキビの炎症が悪化し、毛穴表面に黄色もしくは白色の膿(うみ)ができたニキビ
紫ニキビ
毛穴の深い部分に膿や血が混ざり合い、紫色に見えたり、しこり状になったニキビ

微小面ぽうや白ニキビ、黒ニキビは炎症を起こすまでに至っていないため、抗生物質による治療は行いません。一方、白ニキビや黒ニキビが悪化し、炎症を起こした赤ニキビには抗生物質が処方されます。

また、赤ニキビがさらに悪化した黄ニキビや紫ニキビの段階になると、抗生物質で炎症を鎮めることができたとしても、すでに皮膚組織にダメージを受けていることがあります。このような段階になるとニキビ跡として残る可能性が高まるため、早期の予防や治療で進行を食い止めることが重要です。

※各段階のニキビにおける皮膚科治療の詳しい内容については、ニキビの皮膚科治療をご覧ください。

ニキビの炎症を抑える抗生物質の種類

抗生物質にはさまざまな種類がありますが、一般的に用いられるものには、主に以下の種類があります。

β-ラクタム系(ペニシリン系、セフェム系など)
細菌の細胞壁の合成を阻害することで細菌を殺します
マクロライド系
タンパク質の合成を阻害することで細胞の増殖を抑えます
テトラサイクリン系
タンパク質の合成を阻害することで細胞の増殖を抑えます
リンコマイシン系
タンパク質の合成を阻害することで細胞の増殖を抑えます
キノロン系
タンパク質の合成に関わるDNAやRNA(核酸)の働きを阻害します

このうち、ニキビの治療に広く用いられるのは以下のような種類です。

【タンパク質合成阻害薬】

  • マクロライド系抗生物質(ルリッド、クラリスなど)
  • テトラサイクリン系抗生物質(ビブラマイシン、ミノマイシンなど)
  • リンコマイシン系抗生物質(ダラシンTゲル、ダラシンローションなど)

【DNA・RNA合成阻害薬】 

  • ニューキノロン系抗生物質(アクアチムクリーム、アクアチムローション、ゼビアックスローションなど)

皮膚科で処方される抗生物質の種類と効果

皮膚科で処方されるニキビ治療の抗生物質は、飲み薬(内服薬)と塗り薬(外用薬)の2種類に分けられます。それぞれ代表的な抗生物質は、以下のとおりです。

飲み薬(内服薬)

抗生物質の飲み薬は広範囲にわたる炎症を一気に抑えることができます。日本皮膚科学会によるニキビの治療ガイドラインにおいては、以下をはじめ複数の治療薬が推奨されています。

  • ルリッド(成分名ロキシスロマイシン/マクロライド系抗生物質)
  • クラリス(成分名クラリスロマイシン/マクロライド系抗生物質)
  • ミノマイシン(成分名ミノサイクリン/テトラサイクリン系抗生物質)
  • ビブラマイシン(成分名ドキシサイクリン/テトラサイクリン系抗生物質)

ニキビの治療においてはある程度長期の服用が必要になるため、多くの場合は副作用が比較的少ないマクロライド系の抗生物質が処方されます。

一方、マクロライド系抗生物質では改善が難しい重症のニキビ(特に若い男性のニキビ)などには、期間を限定したうえでテトラサイクリン系のミノマイシンが用いられることもあります。ただし、ミノマイシンは長期間服用するとまれに色素沈着を起こすことがあるため、服用には慎重を要します。また、妊娠中の服用は不可とされています。

塗り薬(外用薬)

抗生物質の塗り薬には以下のようなものがあります。剤形は、クリーム(軟膏)やゲル、ローションなどさまざまです。

  • アクアチムクリーム/アクアチムローション(成分名ナジフロキサシン/ニューキノロン系抗生物質)
  • ダラシンTゲル、ダラシンローション(成分名クリンダマイシン/リンコマイシン系抗生物質)
  • ゼビアックスローション(成分名オゼノキサシン/ニューキノロン系抗生物質)

塗り薬では、一般的にニューキノロン系とリンコマイシン系の抗生物質が処方されます。これらは、ニキビの原因菌であるアクネ菌を殺菌する作用があり、赤く腫れたニキビを急速に鎮めます。

ニューキノロン系のアクアチムは比較的古くからニキビ治療に処方されてきた薬です。リンコマイシン系のダラシンは、アクネ桿菌やブドウ球菌などを殺菌する効果が高いといわれています。

ニキビへの効果・効能は、従来のニューキノロンの製剤よりもリンコマイシン系の方が広く使用されてきました。その結果、耐性菌といって、薬が効かなくなる現象が問題になってきています。最近になって新しいニューキノロン製剤が発売され、こちらに関しては効果および耐性菌の問題がなく、有用性が期待されています。

耐性菌の問題をおさえるためには、指示された部位以外や顔全体に塗るなど間違った自己治療にならないよう気をつけましょう。

また、抗生剤の外用剤では予防として塗布してはならないことがわかっています。使用頻度や用法は医師の指示通り守るよう心がけましょう。

抗生物質の使い方と注意すること

炎症を起こした赤ニキビに効果的な抗生物質ですが、使用の際にはどのような点に注意するべきなのでしょうか。ここからは、抗生物質を使用する際に気をつけたいポイントと、知っておきたいデメリットについて見ていきましょう。

肌バランスが乱れバリア機能が低下

アクネ菌には大腸菌と同じように善玉菌と悪玉菌が存在し、ニキビは悪玉菌が作用することで悪化していきます。抗生物質で菌を一掃してしまうと、肌によい作用をもたらしている善玉のアクネ菌までも死滅させてしまうため、皮膚環境が悪化したり、肌のバリア機能が低下してしまう可能性があります。

長期間の使用は控える

ニキビ治療に抗生物質を使用するうえで注意したいのが、薬の連用期間です。ニキビ治療に限らず抗生物質を長期間使用し続けると、耐性菌が出現し、抗生物質の効かない菌を生み出すおそれがあります。そのため、慢性的に続くニキビにおいては、別の治療計画が立てられることもあります。

アクネ菌による炎症が治まらない場合は中止も

抗生物質の効果は、あくまでもアクネ菌の繁殖を防いで炎症を抑えるだけで、ニキビそのものを消失させる効果はありません。炎症が治まった後は、毛穴のつまりを改善するディフェリンゲル(成分名アダパレン)やベピオ、エピデュオ(成分名過酸化ベンゾイル)などの塗り薬を使用して治療していきます。

抗生物質を使用する際は、長くても以下の期間をめどとし、効果が得られない場合は使用を中止するよう指示されますので、必ず従うようにしましょう。

飲み薬(内服薬)
1か月から3か月程度
塗り薬(外用薬)
4週間程度

内服薬よりも外用薬のほうが耐性菌は出にくいとされてはいますが、今後さらに耐性菌の問題が大きくなればさらに短期間で中止するようになっていくかもしれません。ニキビの治療に抗生物質を用いるときは、必ず医師の診断のもとで処方される用法・用量を守りましょう。

抗生物質の副作用

ニキビ治療に用いられる抗生物質の副作用についても見ていきましょう。飲み薬と塗り薬それぞれについて解説します。

飲み薬は吐き気や胃痛などに注意

抗生物質の飲み薬は、色素沈着、吐き気、胃痛、下痢などの症状をもたらすことがあります。また、全身に作用するため、まれに肝障害、不整脈やてんかん発作などの副作用が起きることもあります。

持病やアレルギー症状のある人は、低用量ピルを含め他の処方薬や市販薬との飲み合わせが問題となることもあるため、必ず医師と相談したうえで使用してください。また、妊娠中・授乳中の使用は禁止されているものが多いです。必ず確認しましょう。

塗り薬はかゆみや赤みなどが出ることも

塗り薬は皮膚のみに作用するため、内服薬に比べて副作用が少ないというメリットがあります。主な副作用としては、患部にかゆみや赤み、刺激が起こったり、皮膚の乾燥やつっぱり、ほてりなどを感じることがあります。また、体質によってはアレルギーを起こすこともあるので、注意が必要です。

まとめ

皮膚科で行われるニキビ治療として広く浸透している抗生物質ですが、赤く腫れたニキビにしか効果がないことを覚えておきましょう。また、効果は炎症を止めるだけにとどまり、ニキビの根本原因そのものを取り除いたり、予防したりできないことも知っておきましょう。

一時的に炎症ニキビに悩んでいる場合は、抗生物質で炎症を止めて自然治癒を待つ方法でもいいでしょうが、くり返すニキビに悩んでいる場合は、他の治療もあわせて行うことをおすすめします。

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