食中毒・食あたり

腸管出血性大腸菌(O157)による食中毒の症状と治療法・予防法

更新日:2017/09/29 公開日:2015/04/13

ヘルスケア大学参画ドクター

この記事の監修ドクター

ヘルスケア大学参画ドクター

シェアする

腸管出血性大腸菌(O157)は強力な「ベロ毒素」を作り出すことで、腹痛や下痢、血便などを引き起こします。溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症といった重症に陥ることもあるので、日々の予防が何より大切です。ドクター監修のもと、O157について詳しく解説します。

腸管出血性大腸菌はベロ毒素を作り出し、激しい下痢や血便などを引き起こします。ここではO157をはじめとする腸管出血性大腸菌の特徴、感染経路と予防法、食中毒の症状、治療法について解説します。

腸管出血性大腸菌(O157)とは

大腸菌はすべての人の腸などに生息する細菌(常在菌)で、数多くの種類がありますが、多くは無害です。しかし、大腸菌の一部には人に悪さをするものがおり、「下痢原性大腸菌」という名称で区別されています。このなかで、強力な毒素「ベロ毒素」を作り出して出血を伴う下痢を引き起こす一群は「腸管出血性大腸菌」と呼ばれています。

O157は腸管出血性大腸菌の一種です。O157の「O」は大腸菌の表面にある成分のことで、菌によって少しずつ形が違います。発見された順にO1、O2、O3…と番号が付いていき、現在では200種類弱が知られています。腸管出血性大腸菌はO157をはじめとして、O26、O103、O111、O121、O145などが知られています。なかでもO157は発生頻度が高く、重症度も高いので食中毒の原因菌として注目されています。

O157の特徴

O157には、主に以下の3つの特徴があります(O157以外の腸管出血性大腸菌も似たような特徴を持っています)。

強力な感染力

食中毒の中には、1000万個以上もの大量の菌が体内に入ってはじめて症状が出るような菌もありますが、O157はたったの100個程度でも感染します。そのため、人や食品を介して感染が広がり、集団発生を起こしやすいのが特徴です。

強い毒性

O157は人間の大腸内で「ベロ毒素」と呼ばれる強力な毒素を作り出します(一部の赤痢菌が作り出す毒素と同じもので、志賀毒素とも呼ばれます)。この毒素は主に腸管や血管を構成する細胞の生命活動(タンパク質合成)を邪魔することで、細胞を傷つけたり殺したりしてしまいます。そのため、出血を伴う下痢が起こるのです。

また、このベロ毒素の一部は血液に入り込んで全身を回ります。O157感染者の約1~10%は溶血性尿毒症症候群(HUS)という病気になって、腎機能が非常に低下して透析が必要となったり、脳症を起こしたり、腸に穴が開いてしまったりして死亡につながるケースが、わずかながらあります。

潜伏期間が長め

下痢や血便などの症状が現れるには、O157が大腸内で増殖してベロ毒素を作り出す時間がかかるため、菌が体内に入ってから症状が現れるまでの期間(潜伏期間)は一般的に3~7日間程度かかります。これは他の食中毒と比べても長めです。このため早い段階での感染源の特定ができず、気づかないうちにO157に感染した食品が流通してしまったり、調理器具や人を介して広まってしまったりして、感染が拡大してしまう危険性が高いです。

O157による食中毒の予防法

感染経路

O157は、もともとウシやヒツジ、シカなどの反芻動物の大腸内に生息しています。食肉加工をする際に、O157が付着してしまった生肉や、糞便が混ざった土を介してO157が付着した野菜や水を飲食してしまうことで感染します。また、O157感染者の便から感染するというルートもあります。

予防法

O157は大腸菌であり、熱(75℃以上1分間の加熱で死滅)や消毒剤に弱いです。一般的な食中毒と同じ予防法で感染を防ぐことができます。

食中毒対策の大原則は手洗いです。食事やトイレの後はもちろん、感染者のお世話をした際には特に念入りに洗いましょう。また、生肉を調理するときには他の食材などに菌がうつらないよう注意し、まな板、包丁、食器などは熱湯消毒しましょう。食品を十分に加熱してから食べることも大事です。

家庭内にO157に感染した人がいる場合は、トイレと洗面所の消毒が推奨されています。特にトイレの取っ手やドアノブなど、患者が手を触れる可能性のある部分は、逆性石けんまたは両性界面活性剤などを染み込ませた布で拭きましょう。衣服などは家庭用漂白剤に漬け込んでから洗濯します。また、入浴は避け、シャワーなどにとどめておきましょう。タオルなどの共用も避けましょう。

O157による食中毒の症状と治療

症状

食品などを介してO157を摂取しても、3~7日間は症状がありません。その後に右下の腹部を中心とした激しい痛みと、水っぽい下痢が起こり、だんだんと下痢の色が赤くなってきます(血便)。重症になると、下痢の回数が1日に10回以上となり、血液がそのまま出てくる(下血)ようになります。これは7~14日続きます。熱が出ることもありますが、多くは38℃台にとどまるようです。

多くの人はこの後回復に向かいますが、小児や高齢者といった身体の弱い人では、下痢が始まった2~10日後に溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症することがあります。出血が止まりにくくなって貧血を起こし、腎臓に障害をきたします。また、意識障害やけいれん、腸管穿孔、心不全、膵炎なども併発することがあり、死亡する可能性もあります。

治療法

大腸菌による下痢は一般的に、脱水症状を防ぐために水分補給をして、消化にいい刺激の少ないものを食べて安静にしていれば、自然に軽快することが多いと考えられています。

一方、O157などの腸管出血性大腸菌による食中毒の場合は症状が重いので、菌を殺すための抗菌薬(抗生物質)を投与するかを検討します。ただし、抗菌薬の使用については賛否両論あり(抗菌薬の使用で症状が悪化するという報告や、抗菌薬の早期投与が有効という報告が出ています)、現時点では抗菌薬を投与すべきかどうかは結論が出ていません。患者の状況と症状をみて、主治医が個別に判断することになります。ちなみに、下痢止めはHUSの発症リスクを高める可能性があるので、なるべく使用しないことが推奨されています。

なお、患者の家族で、腸管出血性大腸菌が体内にあるものの症状が出ていない場合は、それ以上感染を広げないように抗菌薬を投与することがあります。

参考文献

  1. [1]溶血性尿毒症症候群の診断 ・ 治療ガイドライン作成班.溶血性尿毒症症候群の診断・治療ガイドライン.東京医学社 2014
  2. [2]JAID/JSC 感染症治療ガイド・ガイドライン作成委員会腸管感染症ワーキンググループ. JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2015―腸管感染症―
  3. [3]厚生省.一次、二次医療機関のための 腸管出血性大腸菌(O157等)感染症治療の手引き(改訂版).1997
  4. [4]竹田多恵.腸管出血性大腸菌感染症,日本医師会雑誌(臨増)1999;122(10):80-83
  5. [5]西川偵一ほか.腸管出血性大腸菌の疫学,モダンメディア 2012;58(4):103-112

食中毒の症状と対処法についての関連記事

食中毒・食あたり サブテーマ

食中毒の症状と対処法 記事ランキング

fem.リサーチ