もやもや病

日本人に多い難病、もやもや病とは

更新日:2017/04/11 公開日:2016/05/20

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もやもや病は、日本で最初に発見された日本人に多い病気です。脳の血管を映した画像にもやもやとした煙のような細い血管が現れることが、病名の由来です。ここではもやもや病とはどのような病気か、ドクターの監修の記事で解説します。

もやもや病は、1957年に日本で発見された、日本人に多い病気です。はっきりとした原因はいまだに分かっていない難病ですが、検査によって病気の状態をしっかりと把握しながら治療を行うことで、重症化を予防することが可能です。ここでは、もやもや病という病気について、わかりやすく解説します。

もやもや病は脳の血管の病気

もやもや病は、脳の血管に異常が起こる病気です。脳は大きく大脳・小脳・脳幹の3つの部位に分けられますが、もやもや病は大脳に血液を送る内頸(ないけい)動脈の血管が狭くなったり(狭窄;きょうさく)、詰まったり(閉塞;へいそく)することによって起こります。この血管は脳の底部で「ウィリス動脈輪(大脳動脈輪)」という環状の連絡路を作っているため、もやもや病は「ウィリス動脈輪閉塞症」とも呼ばれています。

内頸動脈に狭窄や閉塞が起こると、脳に必要な量の血液が供給されなくなってしまいます。血液不足を補うために他の細い動脈が発達して広がり、脳血管造影検査の画像で煙がもやもやしているように見えたことから、もやもや病と呼ばれるようになりました。

遺伝子が関係する?もやもや病の原因とは

もやもや病は、どのような人に起こりやすい病気なのでしょうか?近年、もやもや病の発症に関連性のある遺伝子の特定などの研究が進展し、さまざまなことが明らかになってきています。ここでは、もやもや病の発症と遺伝との関わりなど、現在までに分かっていることをまとめます。

アジア人に多く、欧米人に少ないもやもや病

もやもや病は、発生頻度に地域差があることが知られています。欧米やアフリカでは、患者数が少なく日本や韓国、中国などの東アジアに患者数が多いとされています。欧米の患者にはアジア系の人種が多く含まれるという報告もあることから、発症のしやすさには人種差があり、なんらかの遺伝的要因がこの病気に関係していると考えられてきました。病気の原因はまだ解明されていませんが、発症にはほかの病気と同様に、遺伝的要因と環境要因の両方が関係していると考えられています。

家族内に複数の発症者が出る場合もある

もやもや病は、家族内に複数の発症者がいる家族性もやもや病と、家族内に発症者のいない孤発性もやもや病があります。家族性もやもや病の発症は、全体の10~12%ほどです。家族内にもやもや病患者がいても、患者の血縁者が必ずしももやもや病を発症するわけではありません。また、もやもや病患者の子供が、必ずしももやもや病を発症するとは言い切れません。また、難病ではありますが、すべての患者が重症化するわけではありません。たとえ家族にもやもや病の患者がいたとしても、過度に心配する必要はありません。

家族性もやもや病の中には、3世代以上にわたり発症者がみられる家系もあるため、血縁者の中に比較的若くして脳卒中になった人がいる場合などは、脳血管の状態を調べる検査で異常の有無を確認すると安心です。

もやもや病の診断や治療前に必要な検査とは?

もやもや病は、同じような症状がみられる他の病気も多く、はっきりした原因も解明されていないため、診断には脳血管の状態を調べる検査が欠かせません。また、手術が必要かどうか、どのような手術が有効かなどの治療方針を決定するためには、脳の血流を調べる検査も行う必要があります。

検査には、脳血管造影・MRI・MRAがある

もやもや病に特徴的な症状がみられ、もやもや病が疑われる場合、脳の内頚(ないけい)動脈に狭窄(きょうさく)や閉塞(へいそく)があるか、脳底部に「もやもや血管」という特徴的な血管がみられるかを、検査で調べます。脳血管の状態を調べる検査には、脳血管造影やMRI(核磁気共鳴画像)、MRA(磁気共鳴血管画像)などがあります。MRIやMRAは身体への負担が少なく、早期の確定診断が可能です。ただし、成人の場合は他の病気による血管病変と紛らわしいことが多いため、MRIやMRAのみでは診断せず、脳血管造影を行うことが推奨されています。

もやもや病の診断については、

『もやもや病の診断基準とは』で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

脳血管造影とは

カテーテルという細長い管を足の付け根の動脈から身体の中に入れ、造影剤を注入して行う検査です。造影剤が血管の中を流れていく様子を連続撮影することで、血管の状態を調べることができます。細い血管まで詳細に調べることができる一方、確率は低いものの、カテーテルによる血管損傷などのリスクがあります。成人は局所麻酔で行うことができますが、子供の場合は全身麻酔が必要になります。検査にかかる時間は1~2時間で、その後少なくとも4~5時間ほど安静にする必要があります。

MRIとMRAについて

MRIは、強力な磁気を用いて全身の状態を輪切り状に画像化する検査です。磁場を作り出すドーナツ型の装置の中に入り、20~30分ほど動かずに寝ているだけで撮影は終了します。脳腫瘍や脳出血などの異常を見つけるために使われます。

MRAは、MRI装置を用いて同じように行う検査ですが、血管だけを立体的に描き出すことができます。MRI、MRAともに、検査は入院せずに行えます。脳血管造影のようなリスクはありませんが、診断能力は少し劣ります。

脳血流検査によって手術の適応を判定

もやもや病と診断が確定したら、手術が必要かどうかを判断するために脳の血流を調べる検査を行います。検査方法には、SPECTやPETなどがあります。これらの検査は、脳卒中リスクの評価や脳のどちら側を手術するのかを決定するのにも役立ちます。

SPECT(単一光子放射断層撮影)

微量の放射性薬剤を静脈内に注射し、身体の断層画像を撮影することで、その分布状態を調べる検査です。脳血流量がどの程度低下しているのか、どの部分の血流が低下しているのかを調べることができます。

PET(陽電子放射断層撮影)

SPECTと同じく放射性の薬剤を注射して身体の断層画像を撮影し、脳血流量や脳血液量などを調べる検査です。小さな範囲の異常を見る分解能はSPECTより優れていますが、検査が行える施設数が少ないため、SPECTのほうが一般的です。

もやもや病ではどのような症状が現れる?

もやもや病の症状は、脳の虚血症状が現れる虚血型と、脳出血の症状が現れる出血型に大きく分けられます。子供の場合は虚血型を示すことがほとんどで、成人では30~40%に出血型の症状がみられます。

虚血型

もやもや病は、小児患者も成人患者も、一過性脳虚血症状が現れる虚血型を示すことが多いといわれます。虚血型は、脳の一部の血液の流れが一時的に悪くなることで、一過性脳虚血発作の症状が現れます。典型的な症状には、以下のようなものがあります。

・口のまわりや手足がしびれる

・力が入らなくなる

・ろれつがまわらなくなる

・目が見えにくくなる

一過性脳虚血発作は、24時間以内に症状が消えるものを言いますが、多くの場合、数分から数十分で完全に消えてしまいます。

出血型

成人の場合、脳内出血や脳室内出血、くも膜下出血などの頭蓋内出血によって症状が現れる出血型が多くなります。もやもや病では、脳内にある内頚(ないけい)動脈という太い血管が細くなり、血流不足が起こりやすくなっているため、もともとは細い血管が拡張し、不足した血流を補っています。この血管をもやもや血管と言いますが、血管の壁が破れやすくなっており、頭蓋内の出血はこのもやもや血管から起こると考えられています。

頭蓋内出血が起こると、出血した脳の部位に応じた症状が現れます。出血型の典型的な症状には、以下のようなものがあります。

・頭痛

・嘔吐

・意識障害(昏睡状態や意識混濁など)

・身体の麻痺

・言語障害

症状の程度は、出血が起こった部位や出血量によって異なります。出血が少量で、症状が軽快することもあれば、重篤な後遺症が残ってしまう場合もあります。また、再出血のリスクも高く、もやもや病の死亡例の多くは出血型といわれています。

10歳未満と30~40歳代で多く発症

もやもや病患者は、日本では人口10万人あたり3~6人程度だといわれています。患者数は除々に増加していますが、これは病気への認識が広がったこととMRIなどの検査が普及したことにより、診断される機会が増えたためと考えられます。男女比は1:1.8と、女性に多く発症する傾向があります。

また、家族内での発症が10~12%程度みられるとされており、もやもや病を発症した患者の親や兄弟姉妹、いとこなどの血縁者に発症する可能性があると考えられます。

もやもや病は、10歳未満の子供と30~40歳代の成人で発症することが多い病気です。10歳未満で発症した患者の割合は、47.8%と報告されています。子供の場合と成人の場合とで、現れる症状にも違いがあります。もやもや病の症状は、脳の虚血で発症する虚血型と脳の出血で発症する出血型に大きく分けられますが、子供はほとんどの場合虚血型で、成人では、虚血型に加えて出血型もみられます。

医療費助成を受けることが可能

日本では、現在306の病気が厚生労働省により「特定疾患(難病)」として指定されており、もやもや病もそのうちの1つです。特定疾患に指定されている病気の患者は、医療費の助成を受けることができます。医療費助成の申請には、医師の診断書、住民票、確定申告書の写しや納税証明書などの書類が必要となります。具体的な手続きについては、住んでいる地域の保健所などに確認しましょう。申請が受理されれば、所得に応じた助成を受けることができます。

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