ADHD

ADHDと遺伝の関係

更新日:2017/09/14 公開日:2016/05/20

ヘルスケア大学参画ドクター

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発達障害のひとつであるADHD(注意欠如・多動症)は遺伝とも関係があるといわれますが、本当なのでしょうか。もし身内にADHDがいる場合、子供はADHDになるのでしょうか。こうした疑問をドクター監修の記事にてお伝えします。

ADHDの発症の要因として、遺伝との関係が指摘されています。以下で詳しく解説します。

ADHDとは?症状が現れるのはいつごろ?

ADHDとは、Attention Deficit Hyperactivity Disorderの略です。Attention Deficitは注意欠陥、Hyperactivity Disorderは多動性障害を意味します。

ADHDはかつて「注意欠陥多動性障害」といわれていましたが、日本精神神経学会のガイドラインの変更(診断マニュアルDSM-V)により、最近では「注意欠如多動症」と言うようになりました。病院によっては「注意欠如多動性障害」または「注意欠損多動性障害」と言うこともあります。

ADHDは、集中力がない「不注意」、落ち着きがない「多動性」、考える前に行動する「衝動性」の3つの症状を主とする発達障害のひとつで、学齢期(小・中学校)の子供の3~7%(30人中1~2人)に見られます。

女子よりも男子の方が3~5倍多く、病気が見つかる診断時期も、女子が12歳頃なのに対し、男子は8歳以前と早い傾向があります。また、この症状が大人になっても改善せずに残る場合を「大人のADHD」と呼んでいます。

ADHDの原因は遺伝によるもの?

ADHDの原因はまだ詳しく解明されていませんが、ひとつの要因として遺伝的な関与があると考えられています。

遺伝の確率は?

その理由は、ADHDは家族・血縁者内で発生率が高い傾向にあるためです。アメリカでの調査によると、両親のどちらかがADHDの場合、子供が発症する確率は最大50%と報告されています。また、ADHDの兄弟がいる場合にADHDを発症する確率は、いない場合よりも5~7倍高いという結果もでています。

これらのことから、ADHDの原因には、遺伝的要因が関与していることがわかってきています。現在、ADHDの遺伝に関する研究は世界中で進められており、関与が疑われるいくつかの遺伝子に注目が集まっています。

遺伝だけでなく環境要因も関係

ADHDの遺伝的要因とは、たとえば身内にがん患者がいると自分もがんになるリスクが高まるといったケースと同じ「家族性」と呼ばれるタイプのものです。しかし、親がADHDならば子供も必ずADHDになるということではありません。

兄弟そろって発現するとは限らない

実際に、双子の子供を対象にした研究によると、一卵性双生児が二人ともADHDになる確率は80%という報告があります。同じ遺伝子を持つ一卵性双生児であっても確率が100%にならないのは、遺伝以外の要因が関係しているということでしょう。

つまり、ADHDになりやすい要素を先天的に受け継いだとしても、それだけで発症するわけではなく、さまざまな環境要因が重なることでADHDを発症したり、しなかったりするのではないかと考えられているのです。

環境的な要因の種類

なお、環境要因としては、出産前の母体のたばこ・アルコール・鉛の摂取などが考えられます。低出生体重児ではADHDを発症する率が高いともいわれています。また、子供の食品添加物(保存料・着色料)の摂取や、工業用化学物質に低濃度でさらされること、子供の栄養不良などが、ADHDの発症・悪化に関係しているのではないか、という研究も進められています。

また、胎児期の障害や出産時の頭部外傷などがあった場合、通常に比べて子供のADHDの発症が2倍以上という報告があります。ただし、はっきりとした因果関係はわかっていません。

「育て方の問題」は誤解

ADHDが今ほど認知されていない頃、ADHDの子供はいわゆる問題児として、親の育て方・しつけ方の問題といわれることもありました。しかし、ADHDの発症はしつけとは関係がありません。

最近の研究によって、脳の画像診断や血流量・代謝機能・脳波検査などから、ADHDの原因は脳の機能低下によるものが大きいこともわかってきています。また、神経伝達物質であるドーパミンやノルアドレナリンには脳の神経細胞に情報を伝える役割がありますが、これらの物質が不足することで不注意や多動性が起こると考えられています。

ADHDは生まれつきのその子の特性であり、治療によって完治するといったものでもありません。しかし、本人が周囲の人とのかかわり方を身につけ、周囲もADHDについて理解し、接し方を学ぶといった環境を整えることで、困難な状況を乗り越える力を養うことができます。

「もしかしたらADHD?」と思ったときは

子供の場合

子供の場合は、小児科で発達障害に詳しい医師が開業するクリニックや児童精神科のクリニックなどを探してみてください。総合病院や大学病院の小児科や精神科には、発達障害相談外来や児童精神科外来が設置されている施設も増えています。子供のADHDの診断基準については、『子供のADHDの診断法』も参考にしてください。

また、医師の診断を受ける際、あらかじめ日常生活について気になる部分をチェックして持参することで、診断の参考になります。ADHDが疑われる子供のためのチェックシートについては、『注意欠如・多動性障害(ADHD)とは?症状・特徴とチェック・診断方法』内の「注意欠如・多動性障害かどうか判断するには?」をご覧ください。

成人の場合

成人の場合は精神科、または精神神経科を受診しましょう。また、数はまだ多くありませんが、成人を対象とした「発達障害外来」や「ADHD外来」などの専門外来を設けている医療機関も少しずつ増えています。

最近は子供だけでなく、大人のADHDについての認知度も徐々に高まっています。大人のADHDの主な症状については、『大人のADHDの症状について』をご参照ください。

ADHDの治療法は?

周囲の人とのかかわりなどの人的環境を含めた環境を整えたり、本人が適切な行動を学んだり、親が対処法を学ぶなどの心理・社会的治療が行われます。そのうえで、必要に応じてADHDの諸症状を改善する治療薬が処方されることもあります。

心理・社会的治療

ADHDの子供はもともと対人関係や集団行動が上手くいかないため、友達ができにくく、孤立しやすいといった傾向にあります。そうすると、ますますスキルを習得する機会が少なくなってしまうという悪循環に陥ります。

そこで、認知行動療法を取り入れた集団療法を通してソーシャルスキルを学び、日常生活の中でも上手く使えるようになることを目的に「ソーシャルスキル・トレーニング」などの訓練を行っていきます。

さらには、ご褒美や罰を与えることで条件反射的に正しい行動を身につけていく「トークンエコノミー」などの行動療法」も行われます。

ADHDの基本となる治療法の心理・社会的治療については、『ADHDの心理・社会的治療ソーシャルスキル・トレーニングとは』で解説しています。

薬による治療

ADHDの子供は、脳内の神経伝達物質「ドーパミン」「ノルアドレナリン」が不足気味であることがわかっています。ドーパミン、ノルアドレナリンは脳の神経細胞間で情報のやりとりをする働きがあり、これが不足することで不注意や多動性といったADHDの症状が起こると考えられています。

そこで治療では、神経伝達物質を活性化させるメチルフェニデートとアトモキセチンと呼ばれる薬物が用いられます。どちらもADHDの治療薬として承認されている薬です。

これらの薬によって期待できる効果や注意点については、『ADHDの治療に用いられる薬とは』をご覧ください。

まとめ

ADHDの原因には、遺伝的要因が関与していることがわかってきています。しかし、必ずしもそれだけでなく、環境要因も関係しています。また、ADHDは本人の性格や親のしつけ、育った環境によって発症するものではありません。脳の機能障害であることを正しく理解することが大切です。

子供にとっても、大人にとっても決して珍しい病気ではないADHD。思い当たることがあれば早めに医療機関を受診し、きちんと診断を受け、対処していくことが大切です。

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