現在は、さまざまなスキンケア用品があり、化粧品も充実していますが、化粧品が手軽に市販されていない時代、人々はどのようなスキンケアをしていたのでしょうか?現代とは生活様式や環境という点で大きな隔たりがあっても、女性の「美」への意識はいつの時代も変わりません。昔の女性はへちま水や椿油、うぐいすの糞、米ぬかなど、身近にあるものをうまく利用してケアしていたようです。
おばあちゃんの知恵袋のようなアイデアですが、古くから伝承されてきたものには、それなりの根拠のあるようです。こちらでは、昔の人のスキンケアについて、いくつか例を挙げてご紹介していきます。
へちま水
起源は江戸時代とも室町時代とも言われています。「美人水」や「花の露」などとも呼ばれ、汁液は化粧水や美容液として、あるいは薬用として、長く親しまれてきました。へちま水は、単純に、へちまの根や茎を切った切り口からにじみ出てくる水を採取し、そのままつけたり、他のものと配合したりして利用されたようです。
へちまはウリ科の植物で、若い果肉は食用として、熟した果肉の繊維はたわしとしても利用されるなど、さまざまな用途に利用されてきた夏の野菜です。へちまの根っこの汁には、紫外線などのダメージから肌を守る「ブリオール酸」、葉や茎の汁には肌のキメを整える「サポニン」が豊富に含まれており、保湿効果や美肌効果が期待できるそうです。部分によって成分が異なるため、用途に合わせてそれぞれ利用されてきたようです。
うぐいすの糞
春に鳴く鳥うぐいす。うぐいすの糞が洗顔料として使われていたそうです。起源は江戸時代と言われます。糞を顔に塗るのにはかなり勇気がいりそうですが、洗顔として利用する以前から、着物の漂白・しみ抜きにうぐいすの糞が利用されていたようです。梅の枝にとまったうぐいすの姿は絵になりますが、うぐいすは毛虫を食べるために、梅の木にとまるのだそうです。
うぐいすの消化管は短いため、毛虫を消化するための消化酵素が糞にも多量に含まれたまま排出されます。糞の中の酵素は、お化粧や余計な垢や皮脂を溶かすタンパク質や脂肪の分解酵素、肌のシミを消す漂白酵素として働くため、江戸時代では歌舞伎役者や芸者さんの間で重宝されたと言われます。当時は高価なもので庶民には手が届かなかったとも言われますが、やがて武家や公家の奥様方へも広まり、現代へと伝えられています。
米ぬか
米を主食とする日本人にとって、米ぬかは常に身近な存在です。そして、米ぬかにはビタミンB群、ビタミンE,アミノ酸、ミネラル、油分など、肌に嬉しい成分が豊富に含まれています。現在でも「米ぬか化粧水」など米ぬかを使った化粧品はたくさんありますが、江戸時代には、銭湯に袋に詰めた米ぬかを持って行き、顔や体を洗っていたそうです。
汚れを落とす効果だけでなく、保湿や美白、消炎作用も期待できると言われます。他にも、パック、化粧水としても米ぬかは広く利用されていたそうです。また、お米を研ぐ時に出るとぎ汁も、米ぬかどうように、古くからスキンケアに利用されてきたようです。
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