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タトゥー(刺青・入れ墨)の削皮(アブレーション)治療

更新日:2016.12.09
公開日:2015.05.01
ドクター画像
この記事の監修者
六本木境クリニック 院長 境隆博

広範囲なタトゥー(刺青・入れ墨)に用いられる削皮手術(アブレーション・剥削)。植皮(皮膚移植)手術との違いや術後の経過、削皮手術を受ける時の注意点など、気になることがたくさんあります。そこで、年間のべ300症例を超えるタトゥー除去治療を行ってきた六本木境クリニックの境院長に、タトゥーの削皮手術の詳細を教えていただきました。

タトゥーを背中に入れた女性

タトゥー(刺青)の削皮手術(アブレーション・剥削)は、「皮膚を削る」という言葉の印象から、怖いイメージを持つ方が少なくありません。しかし、広範囲のタトゥーを除去するには、植皮と並ぶ選択肢の1つでもあります。

そこで、削皮手術によるタトゥーの除去治療の効果や術後の経過、傷跡などについて、「六本木境クリニック」院長、境隆博先生に詳しく伺いました。

六本木境クリニック院長 境隆博先生

境先生は、年間のべ300症例を超えるタトゥー除去の治療を行っており、タトゥー除去治療について深い知識と豊富なご経験をお持ちです。

タトゥーの削皮手術(アブレーション・剥削)の内容と特徴

Q: まずは削皮手術の内容と特徴について教えてください。

境先生:まずご理解いただきたいのは、削皮手術は医者だったら誰でもできる反面、「良い結果を出すのが一番難しい治療」だということです。腕のいい医者とそうでない医者では、術後の経過も傷跡も全く違います。まずは、「技術と経験がある医者が行った場合」という前提で、削皮手術についてご説明したいと思います。

削皮によるタトゥーの除去治療とは、皮膚に入っているタトゥーの墨の約90%を削り取る治療法です。皮膚の全てを削り取るわけではなく、なるべく薄く、タトゥーが入っている部分ぎりぎりを削っていきます。なるべく薄く削ることで、局所や体への負担を減らすことができます。

そうすると、削った部分は擦り傷となり、下の図のように貪食細胞(マクロファージ)が集まってきて、残りの墨を分解・処理して薄くします。

貪食細胞(マクロファージ)

経過を観察し、貪食細胞(マクロファージ)が分解・除去しきれなかった墨がある場合は、更にレーザーを当てます。レーザーを当てることで墨を粉々にし、貪食細胞(マクロファージ)が食べやすくしてタトゥーを消していきます。

タトゥーのレーザー治療の効果・痛み・後遺症』でご説明した通り、レーザー治療のみでは、レーザーによるやけど跡で回を重ねる毎にレーザーが墨に届きにくくなります。また、マクロファージが吸収・分解できる墨の量は限られているため、下図のように、墨の量が多いタトゥーをレーザーで消すことはできません。

限界を超えたマクロファージ

マクロファージは、墨の密度や量が多い場合には上手く排泄できません。このことは、レーザーのみの治療が墨の量が多い場合には現実的ではない大きな理由の1つです。

しかし、削皮を行うことで、マクロファージが問題なく吸収・排泄できる量まで墨を減らし、そこにレーザーを併用すると、かなり消すのが難しいタトゥーでも、効果的に除去することができます。実際の臨床では、レーザー単独治療とは比較にならないほど、削皮後のレーザーは効果があることを目の当たりにしています。

削皮(アブレーション・剥削)は担当医によって仕上がりが異なる

Q: 先ほど「腕のいい医者とそうでない医者では、術後の経過も傷跡も全く違う」とお伺いしましたが、どのような差が出るのでしょうか。

境先生:まず、術後の経過が違います。他院でタトゥーの削皮手術を途中まで受け、私のクリニックに相談にいらっしゃった患者さんのお話では、前は1度削皮を受けると傷が安定するまでに3ヶ月もかかり、その間はガーゼを常に貼らなくてはならなかったそうです。

入浴はもちろん不可で、シャワーを浴びる時はガーゼの上からビニールでカバーをし、患部を直接洗うことはできなかったため、化膿したり、蒸れて臭くなり、最悪だったと仰っていました。上皮化に1か月以上かかるような削皮はケロイド状になり、さまざまな問題が生じます。このようになると、見かけだけの問題ではなく、近くの関節の動きが悪くなったり、痛み・かゆみ・しびれなどがひどくなる可能性があります。その上、将来的な皮膚癌などのリスクも高くなると思われます。

しかし、私のクリニックでは、削皮手術後、翌日から入浴が可能になります。そして、2週間で上皮化(皮膚の再生が完了)し、キズが安定します。ほとんどの場合、ケロイド状にもなりません。そのため、上述の他院でひどい目に遭った患者さんが私のクリニックの削皮を初めて受けた際は、経過の良いことにビックリされたそうです。

なぜ術後の経過や傷跡に差が出るのか

Q: 翌日からお風呂に入れるのと、3カ月間も濡らすことすらできないとは、大きな違いですね。そのような差は、なぜ生まれるのでしょうか?

境先生:要因は大きくは2つあると思います。1つは担当医のスキルや経験、そしてもう1つは、手術に手間をかけるかどうかです。

まず、1つ目のスキルや経験ですが、削皮に慣れていない医師が行うと、上述のようなひどい結果となります。削皮は、浅すぎるとタトゥーが残ってしまいますが、深く削りすぎると、まるで化膿したかのように治りが悪く、傷跡が激しいケロイド状になります。

削りすぎによってケロイド状になった傷跡

ケロイド状になってしまうのを防ぐためにも、ミクロ単位で削り具合を調整する必要があります。しかし、医師によっては、技術や経験が不足しており、この細かな調整が難しい場合があります。

削皮のような治療は、やはり創傷治癒(傷の治療)の最新治療に長けた医師で、なお且つ、熱傷(やけど)の治療などで、皮膚を削った経験が豊富な医者がやるべき治療です。そのような医師でなければ、深さを的確に推測して計算通りに削ることは難しく、削り過ぎによって、前述のようなひどい結果となってしまいます。

削皮は時間と手間を省くと悪い結果となる

Q:医師によって削皮後の傷跡や経過に差がある理由の2つ目は「時間や手間をかけているか」ということですが、具体的にはどのようなことでしょうか。 

境先生: 術後の経過や傷跡のことを気にせず、「墨が除去できればいい」というような方針で削皮を行うのであれば、広範囲のタトゥーでも、たった30分程度で終わります。しかし、このように削皮をすると、皮膚を削りすぎていることによって治癒するのに長時間を要し、傷跡はケロイド状になります。

しかし本来は、以下のように、まずは局所や身体になるべく負担がかからないよう、まずは全体を浅く削ります。この段階で墨をなるべく削り取ろうと深く削ると、手術時間は短く、また医者の立場からすると簡単に済ますことができますが、削りすぎとなり、術後の経過が悪くなります。そのため、下図のように、墨が多く残っても、浅く削ることが重要です。

削皮

その後、墨が多く残っている部分のみ、時間をかけて小さなカミソリや顕微鏡手術用の道具で丁寧に除去するのが良い方法です。

正しい削皮治療

また、手術中に患部が乾燥するとケロイド状になりやすいので、生理食塩水で洗いながら行う必要があります。

このように、術後の経過や傷跡のことを考えて削皮を行うと、大変な時間と手間がかかります。小さなタトゥーでも1時間半、大きさものだと3~4時間は平気でかかり、個人的には一番疲れる手術のひとつです。

削皮を検討中の方が注意すべき点

Q:一言で削皮といっても、削皮を行うクリニックや医師によって、結果に大きな違いが出ることがよく分かりました。最後に、削皮手術を検討中の方へメッセージをお願いします。 

境先生: 削皮は、「傷跡が目立つ」「ケロイド状になる」「術後、1カ月はお風呂に入れない」などといったご意見を聞くことが多いのですが、これらはスキルや経験が不足している医師が行ったり、時間や手間を惜しんだ場合に起こることです。削皮は、スキルや経験が十分な医師が正しく行えば、広範囲のタトゥー治療においては最善の結果が出せる治療法だと思います。

広範囲のタトゥーの場合、植皮手術(皮膚移植)を勧める医者もいます。植皮の場合、上に皮膚を被せるので、技術や経験がそれほど豊富でない医師が行っても、術後は比較的安定した結果がでやすいと言えます。

しかし、当然ながら、移植する皮膚を別の部位から採取する必要があり、タトゥーを除去したい部位以外にも傷跡がつきます。他にも、『タトゥーの皮膚移植による治療』で詳しくご説明していますが、安易な皮膚移植は、削皮と同様にたくさんの問題を引き起こします。

焦って治療に飛びつかず、複数のクリニックや医師に相談して意見を仰ぐなど、慎重に治療方法を選ぶようにしてください。

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